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« 原告団について | トップページ | 秘密保護法違憲訴訟の「執 行 停 止 申 立 書」を公開 »

2014年10月 6日 (月)

秘密保護法違憲確認・施行差し止め請求訴訟の訴状公開

フリーランス表現者43人(ジャーナリスト・写真家・映画監督など)が2014年3月28日に提起した「秘密保護法違憲確認・施行差し止め請求訴訟」の訴状を公開します。

 これを参考に、日本全国のさまざまな職業集団や地域の方が訴訟提起してくれることを望みます。法が施行されても裁判は起こせます。必ず秘密保護法をを廃止にしなければなりません。

訴       状

平成26年3月28日

 

東京地方裁判所  御 中

 

 

   原告ら訴訟代理人

弁護士  堀 敏明

 

同    山下幸夫

 

 

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

 

特定秘密の保護に関する法律無効確認等請求事件

  訴訟物の価額   金1億4190万円

ちょう用印紙額  金44万6000円

 

第1 請求の趣旨

 特定秘密の保護に関する法律(平成25年法第108号)が無効であることを確認する。

 被告は,特定秘密の保護に関する法律(平成25年法第108号)を施行してはならない。

3 被告は,各原告に対し,金10万円及びこれに対する平成25年12月6日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 4 訴訟費用は被告の負担とする。

  との判決を求める。

 

第2 請求の原因

 当事者

(1) 原告ら

 原告今西憲之は,フリーライターである。

 原告寺澤 有は,フリージャーナリストである。

 原告畠山は,フリーランスライターである。

 原告清見は,フリーランスライターである。

 原告中 由里は,澤邉由里のペンネームで活動しているフリーランスライターである。

 原告明石昇二郎は,ルポライターである。

 原告小笠原 淳は,フリーライターである。

 原告中島みなみは,フリーの記者である。

 原告林 は,フリージャーナリストである。

 原告三宅勝久は,フリージャーナリストである。

 原告黒薮哲哉は,フリーランスライターである。

 原告吉竹幸則は,フリーランスライターである。

 原告木野は,フリージャーナリストである。

 原告原 佑介は,IWJIndependent Web Journalのスタッフである。

 原告柳原滋雄は,フリージャーナリストである。

 原告大森は,渡部真のペンネームで活動するフリーランスの編集者である。

 原告義樹は,フリーランス記者である。

 原告丸田 は,フリーランスライター兼編集者である。

 原告津田哲也は,フリージャーナリストである。

 原告樋口 は,フリーライターである。

 原告岩田 薫は,フリーライターである。

 原告佐藤裕一は,「回答する記者団」の名称で活動するライターである。

 原告山岡俊介は,フリーライター兼「アクセスジャーナル」編集長である。

 原告岩本太郎は,フリーランスライターである。

 原告藤野光太郎は,フリーライター兼編集者である。

 原告横田 一は,フリージャーナリストである。

 原告早川由美子は,映画監督である。

 原告立花は,フリージャーナリストである。

 原告 田 巧は,橘匠の名で「真相JAPAN」を主宰する者である。

 原告中川 亮は,NPJNews for The People in Japan編集長をしている者である。

 原告西中誠一郎は,フリージャーナリストである。

 原告姫野琢也は,古川琢也のペンネームで活動するルポライターである。

 原告森住 卓は,写真家である。

 原告古川美穂は,フリーライターである。

 原告黒羽祐邦は,大島俊一の名で活動するフォトジャーナリストである。

 原告豊田直巳は,フォトジャーナリストである。

 原告橋詰雅博は,フリーランスライターである。

 原告土井敏邦は,フリージャーナリストである。

 原告木元英策は,のペンネームで活動するノンフィクションライターである。

 原告中村誠一は,フリーライターである。

 原告坂井 敦は,フリーライターである。

 原告安田浩一は,フリージャーナリストである。

 原告山口は,フリージャーリストである。

 

(2) 被 告

 被告は,本件法律を制定し,施行しようとする者である。

 

 本件法律制定・公布に至る経緯

  民主党政権のもとで「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」が組織され,2011年(平成23年)8月8日には,「秘密保全のための法制の在り方について」と題する報告書が発表された。自民党・安倍政権はこの作業を受け継ぎ,国家安全保障会議の設置等に関連した手直しが進められた。

 

  法案の作成は,内閣官房情報調査室を中心に秘密裏に行われ,「特定秘密の保護に関する法律案」としてその概要が公表され,2013年(平成25年)9月3日から2週間のパブリック・コメントの期間が設定された。

 

  その後,自民党と公明党の間で調整が行われ,取材活動に関する規定などが挿入されることとなり,「特定秘密の保護に関する法律案」が国会上程されるに至った。

 

  国家安全保障に関する特別委員会が衆議院に設けられ,国家安全保障会議設置法案が可決され,同年11月7日,特定秘密保護法案の審議が始まり,同年11月26日,与党が衆議院特別委員会で法案を強行採決され可決し,同日衆議院本会議で可決され,その後,参議院特別委員会で審議した後,同年12月6日,参議院で強行採決し可決・成立した。

 

  このようにして成立した「特定秘密の保護に関する法律」(以下「本件法律」という。)は,同年12月13日に公布された。

 

  同法の附則において,「この法律は,施行の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」とされているが,まだ,その政令は定められていない。

 

 本件法律の概要

  本件法律の概要は,次のとおりである。

(1) 立法目的

 我が国の安全保障(国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障すること)に関する情報の保護に関し,特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより,その漏えいの防止を図り,もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的とする(本件法律〔以下「法」という。〕第1条)

 

(2) 特定秘密の指定とその有効期間の解除について

ア 行政機関の長は,①防衛に関する事項,②外交に関する事項,③特定有害活動の防止に関する事項,④テロリズムの防止に関する事項に関する情報であって,公になっていないもののうち,その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため,特に秘匿することが必要であるものを特定秘密として指定する(法第3条第1項)

 

 行政機関の長は,指定をするときは,当該指定の日から起算して5年を超えない範囲内においてその有効期間を定める(法第4条1項)

 

 行政機関の長は,5年を超えない範囲内においてその有効期間を延長することができる(法第4条2項)。

 

 指定の有効期間は,通じて30年を超えることができないが,内閣の承認を得た場合は,行政機関の長は,当該指定の有効期間を,通じて30年を超えて延長することができるが,7項目の場合(武器・弾薬・航空機その他の防衛情報,現に行われている外国政府又は国際機関との交渉に不利益を及ぼす情報,情報収集活動の手法又はその能力,人的情報源に関する情報,暗号,外国政府や国際機関から60年を超えて指定を求められた情報,これに準ずる政令で定める情報)を除いて,通じて60年を超えることができない(法第4条第3項,第4項)

 

(3) 特定秘密の提供について

  特定秘密の提供については,①他の行政機関(法第6条),②適合事業者(法第8条),③外国の政府又は国際機関(法第9条),④その他の場合(国会,刑事事件の捜査又は公訴の維持に従事する者等)について,それぞれその要件・手続を定めている。

 

(4) 適性評価制度

  行政機関の長は,特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないことについての適性評価を行うため,特定有害活動及びテロリズムとの関係に関する事項,犯罪及び懲戒の経歴に関する事項,情報の取扱いにおける非違の経歴に関する事項,薬物の濫用及び影響に関する事項,飲酒の節度に関する事項,信用情報その他の経済的な状況に関する事項について調査を行う(法第12条第1項,第2項)

 

(5) 特定秘密の指定等の運用基準等

 政府は,特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し,統一的な運用を図るための基準を定める(法第18条第1項)

 

 内閣総理大臣は,特定秘密の指定等の統一的な基準を定めたり変更する場合には,有識者の意見を聴いた上で,その案を作成し,閣議の決定を求めなければならない(法第18条第2項)。なお,政府は,この有識者の意見を聴くための会議として「情報諮問会議」を設置している。

 

 内閣総理大臣は,毎年,統一的な基準に基づく特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の状況を,前項に規定する有識者(情報諮問会議)に報告し,その意見を聴かなければならない(法第18条第3項)

 

 内閣総理大臣は,特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の状況に関し,その適正を確保するため,統一的な基準に基づいて,内閣を代表して行政各部を指揮監督する(法第18条第4項)

 

 政府は,毎年,有識者(情報諮問会議)の意見を付して,特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の状況について国会に報告するとともに,公表する(法第19条)

 

(6) 罰則

 特定秘密の取扱いの業務に従事する者が,業務により知得した特定秘密を故意に漏らした場合,10年以下の懲役,又は情状による10年以下の懲役及び1000万円以下の罰金の併科に処する(法第23条第1項)

 

 提供された特定秘密を,業務により知得した者が故意に漏らした場合には,5年以下の懲役,又は情状による5年以下の懲役及び500万円以下の罰金の併科に処する(法第23条第3項)

 

 ア,イの未遂犯も処罰する(法第23条第3項)

 

 過失により特定秘密を漏らした場合,2年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する(法第23条第4項)

 

 外国の利益若しくは自己の不正の利益を図り,又は我が国の安全若しくは国民の生命若しくは身体を害すべき用途に供する目的で,特定秘密を保有する者の管理を害する行為により,特定秘密を取得した場合,10年以下の懲役,又は情状により10年以下の懲役及び1000万円以下の罰金に処する(法第24条)

 

 ア及びオの行為の遂行を共謀し,独立教唆し,又は煽動した場合,5年以下の懲役に処する(法第25条第1項)

 

 イの行為の遂行を共謀し,独立教唆し,又は煽動した場合,3年以下の懲役に処する(法第25条第2項)

 

 本件法律が違憲・無効であること

  本件法律は,その内容において,以下に述べるとおり,憲法に違反するものであり,無効である。

 

(1) 憲法前文の基本原則に違反すること

ア 憲法の平和主義に反すること

  本件法律は,軍事立法としての性格を色濃く有している。

  自民党が2012年(平成24年)4月に公表した憲法改正草案は,多くの点で日本国憲法の国民主権,基本的人権の尊重,平和主義という憲法の3つの基本原理を全面的に否定しようとしている。この草案は,平和主義に関しては,日本国憲法の前文及び第9条の全面的な改定を企図しており,国防軍を創設するともに,軍法会議を設置し,軍機保護の規定を置いている。自民党の同年7月の「国家安全保障基本法案」は,集団的自衛権の行使を立法化するとともに,秘密保護のため措置を講じるとしている。

 

  本件法律は,こうした改憲構想の重要な柱として位置づけられている。

  本件法律は,このように,軍事立法としての基本的性格を持っており,憲法第9条の改憲と直結するものであって, 憲法前文及び第9条の平和主義を否定するものである。

 

イ 憲法の国民主権の原理に反すること

  本件法律は,特定秘密を取り扱うこと業する者に対する国家統制(適性評価制度及び厳罰)を強化することで,国民の知る権利を阻害する。

  国民は,安全保障の重要事項に関してこそ,主権者として「知る権利」が保障されなけばならない。

 

  しかしながら,本件法律の施行により,特定秘密に関する報道機関の取材は著しく困難となることは必至である。

 

  国民が政治に関して適切な判断をするためには,重要な事項につき正確な情報を入手できることが重要である。主権者である国民を「見ざる,言わざる,聞かざる」の状態にすることは許されない。

  また,本件法律の施行によって,情報公開制度,公益通報者保護制度は大きな後退を余儀なくされる。

 

  現在でも,防衛秘密等は情報公開の対象から除外されているが ,本件法律が施行されれば,秘密指定が大幅に拡大され,しかもこれに対する不服申立てが否定されることになり,情報公開制度が空洞化されることになる。

 

  防衛省,外務省,警察庁など行政機関が特定秘密として指定した情報は,国家安全保障会議(日本版NSC)に提供されて,安全保障に関する決定が行われる仕組みが想定されており,安全保障に関するあらゆる権限は首相に集中し,統合されることになる。

  その反面,国会の内閣に対するコントロールは有効に機能しないものとなり, 議会制民主主義は著しく弱体化する。

  このように,本件法律は,憲法が保障する国民主権の原理に反している。

 

ウ 憲法が保障する基本的人権を広範囲に侵害すること

  本件法律は,以下に述べるとおり,憲法が保障する基本的人権のうち,プライバシーの権利,学問の自由,国民の「知る権利」や報道・取材の自由などの基本的人権を広範囲に侵害するものである。また,適正手続保障や罪刑法定主義にも反している。

 

() 憲法13条,19条違反

  本件法律は,前述したとおり,適性評価制度を導入し(法第12条以下),特定秘密を扱う者としてふさわしいかどうかの審査を行おうとしている。評価項目は,思想・信条も含む極めて広範囲なものとなっている。

 

  適正評価は,公務員だけでなく,業務委託を受けた民間業者やその従業員も対象となっている。

 

  これにより,プライバシーが広範囲に侵害され,思想調査が横行し,思想の自由(憲法19条)も侵害される。

 

() 憲法23条違反

  本件法律の基本的な罰則である特定秘密漏洩罪は,特定秘密の取扱業務者だけでなく,業務知得者の漏洩も対象にしている(法第23条2項)。

 

  科学技術の領域で,近年,「安全保障」という名の下で軍事研究が拡大しているが,こうした研究が本件法律の下で飛躍的に拡大する可能性が大きい。国立大学や私立大学などで,国や軍事産業の委託を受けて軍具研究や汎用技術の研究などを行う場合,担当する研究者は適正評価の対象となり,その周辺分野も含めて広く特定秘密が指定され,研究者には秘密保護義務が課せられ,漏洩行為に対しては厳罰が科せられる(法第23条)

 

  これにより,研究の内容は秘匿され,研究者相互間での研究内容の共有・吟味の機会が失われ,学会や研究誌・紀要等での発表も規制の対象となり,大学における自由な研究が大きく阻害され,学問の自由(憲法23条)が侵害される。

 

() 憲法21条違反

  報道機関は,国民の「知る権利」に応えて,報道・取材の自由が最大限に保障される必要があり,憲法21条は,これらの自由を,表現の自由のコロラリーとして最大限保障している。

 

  博多駅フィルム事件に関する最高裁判所昭和44年11月26日決定(刑集23巻11号1490頁)は,「報道機関の報道は,民主主義社会において,国民が国政に関与するにつき,重要な判断の資料を提供し,国民の「知る権利」に奉仕するものである。したがつて,思想の表明の自

由とならんで,事実の報道の自由は,表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにあることはいうまでもない。また,このような報道機関の報道が正しい内容をもつためには,報道の自由とともに,報道のための取材の自由も,憲法21条の精神に照らし,十分尊重に値いするものといわなければならない。」と判断しているところである。

 

  しかしながら,本件法律の施行によって,広範な情報が特定秘密に指定されて秘匿され,報道機関への情報提供が特定秘密漏洩罪として処罰の対象となり,公務員や民間企業に働く労働者の表現の自由が著しく制限されることになる。

 

  そして,報道機関による行き過ぎた取材活動は,特定取得行為罪(法第24条),特定秘密漏洩罪の共謀罪,独立教唆罪,煽動罪(法第25条)として処罰されるおそれがある。

 

  すなわち,本件法律は,特定秘密を取扱う公務員等に対して秘密の漏洩を禁止し,違反した者には最高で懲役10年と罰金1000万円との併科という重罰を科することにしている(法第23条)

 

  これに対する行き過ぎた取材活動は,特定取得行為として,同じく,違反した者には最高で懲役10年と罰金1000万円との併科を科すことにしている(法第24条)

 

  これにより,報道機関やフリージャーナリストの取材活動は萎縮させられ,自主規制も広がることが強く懸念される。

  そのため,報道機関やフリージャーナリストだけでなく,平和運動,基地反対運動,脱原発運動などの各種氏民運動レベルでの情報収集活動も著しく制約されることになる。

 

  本件法律は,第22条に「この法律の解釈適用」との見出しの下,「この法律の適用に当たっては,これを拡張して解釈して,国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず,国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない。」(第1項),「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については,専ら公益を図る目的を有し,かつ,法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは,これを正当な業務による行為とするものとする。」(第2項)を規定している。

 

  しかしながら,これは単なる解釈規定であり,これにより,本件法津の本質的危険性は何ら除去された訳ではない。このような配慮規定があっても,取材活動に対する萎縮的効果を取り除くことはできないし,「出版又は報道の業務に従事する者」か否かは,最終的には裁判所が判断するが,その前に警察・検察が判断するのであり「業務に従事」という文言は,そもそも,フリージャーナリストを含まないと解釈される余地が大きい文言であることから,取材をしたフリージャーナリストが,警察・検察の判断で,逮捕・勾留されるおそれがないとは到底言えない。

 

  さらに,第2項により,「専ら公益を図る目的を有」するか否かが問題となるし,令違反の場合だけでなく,著しく不当な方方法による場合には違法になることが示されている。そのため,その適用範囲は極めて曖昧となっており,警察・検察の判断によって,特定取得罪の適用が極めて恣意的に行われるおそれがある。

 

  取材行為が,共謀,独立教唆,煽動とされて検挙される可能性を考えると,さらにその適用範囲の曖昧さは拡大すると考えられる。

  そもそも,共謀,独立教唆及び煽動の処罰は,いずれも,実行行為が未だ存在しない段階の行為を処罰するものであり,内心の意思を処罰するものであり,刑法の基本原則である行為責任主義に反している。

 

  本件法律第22条が,本質的な危険性を有する法律の濫用に対して,どれだけ歯止めになりうるか否かについては,過去に類似の規定を有する破壊活動防止法等の他の法律の運用状況からして,極めて疑わしいと言わなければならない。

  よって,本件法律により,「国民の知る権利」や報道・取材の自由などは大幅に萎縮させられ,表現の自由(憲法21条)が侵害される。

 

() 憲法31条違反

 a  秘密指定の適正性についての第三者機関によるチェックがなされないこと

  本件法律による特定秘密の指定は,行政機関の長が行い(法第3条1項),指定の期間は原則5年とされるが(法第4条1項),その期間は延長可能であり,内閣の承認があれば合算して30年を超えることができるが,通じて60年を超えることができないとし,7項目の例外が認められており,これにより,永久に国民に秘密される情報が存在することが認められている。

 

 政府は,特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し,統一的な運用を図るための基準を定めるものとされ(法第18条1項),内閣総理大臣は,その統一的な基準を定めたり変更する場合には,優れた識見を有する有識者の意見を聴いた上で,その案を作成し,閣議の決定を求めることになっている(同条2項)

 

  政府は,そのための有識者会議として「情報保全諮問会議」を設置している。その有識者メンバーのほとんどが本件法律の賛成者であり,政府に都合の良い人選がされていることが強く批判されている。

 

  その他,本件法律には規定はないが,政府は,内閣総理大臣の下に,内閣官房には「保全監視委員会(仮称)」,内閣府には,「独立公文書監理監(仮称)」と「情報保全監察室(仮称)」が,それぞれ本件法律施行までに発足させる予定である。

 

  しかしながら,これらは,全て,政府の中に置かれるものであり,本質的に「第三者機関」と言えるような態勢はなく,特定秘密の指定に関する第三者によるチェックが全くなされないシステムとなっており,憲法による適正手続保障(憲法31条)は全く満たされていないと言わざるを得ない。

 

 b  罪刑法定主義に反すること

  罪刑法定主義は,犯罪と刑罰が,国会の制定する法律によらなければならないとする原則であり,憲法31条によって保障されていると解されている。

 

  本件法律が規定する罰則は,その文言が極めて曖昧であり,処罰の範囲は,過失犯や未遂処罰だけでなく,共謀,独立教唆,煽動を正犯の行為とは独立して処罰しようとしており,著しく広汎であり,その内容も適正ではなく,かつ,著しく重罰である。

 

  しかも,特定秘密がそもそも広範囲に指定されるものであり,特定秘密の内容は行政機関の長が定めるものとなっている。そのため,本件法律による罰則は,その保護の対象を行政機関の長が定めるという形で広汎に委任しており,行政機関の判断に委ねられているという点でいわば白紙委任しており(いわゆる白地刑法),憲法31条が保障する罪刑法定主義に反している。

 

 c  刑事裁判における適正手続に反していること

  本件法律は,その罰則に違反したとして起訴されて刑事裁判になった場合,被告人や弁護人は,漏洩の対象とされる特定秘密の内容が開示されないおそれがある。

 

  特に,実際に特定秘密が漏洩しないでも独立して処罰する共謀罪,独立教唆罪,煽動罪の場合には,そもそも,被告人は特定秘密を入手する以前に処罰されることになるが,対象となる特定秘密が開示されなければ(政府は,特定秘密の内容を明らかにしない外形立証を行うという方針を示している。),いかなる特定秘密が漏洩されようとしたかも分からないことになる。

 

  すなわち,本件法律は,被告人や弁護人への情報提供を予定していないが(法第10条1号ロ),弁護人が,弁護活動のため秘匿された特定秘密にできるだけ接近しようとして行う関係者への事情聴取等の調査活動や資料収集活動が,特定取得行為や独立教唆等に問われる可能性を否定できず,そのため,弁護活動自体が萎縮させられ,著しい制約を受けることになる。

 

  そうなると,被告人・弁護人としては,そもそも特定秘密として保護に値するかどうか(実質秘)という特定秘密性を刑事裁判で争うことはおよそ困難となり,防禦活動を行うことが不可能になる上,そもそも,裁判の公開が制限されたり,公開の法廷での弁論・尋問等が制限されるおそれがある。

 

  さらに,本件法律は,裁判官に対してすら,一定の場合以外には特定秘密の内容を提供しないことを明示しており,裁判官にすら裁判の対象を示さないまま,有罪にすることを求めることになっており,暗黒裁判となってしまう。

 

  これでは,裁判所は,行政機関の長が指定した判断を追認するだけの機関と堕してしまうと言わざるを得ず,司法の独立は何ら保障されないことになってしまう。

 

  ちなみに,世界70ヶ国以上,500人以上の専門家により,計14回の会議を経て,2013年6月に作成された「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(いわゆるツワネ原則)は,原則29(刑事訴訟の当事者における情報へのアクセス)(b)において,「いかなる場合でも,被告人が証拠について精査,反論する機会を持たないまま,有罪判決を下したり,自由を剥奪すべきではない。」,(c)において,「法的公正さの点から,公的機関は被告人と被告人の弁護人に対し,その個人が問われている容疑と,公正な裁判を確実に行うために必要な他の情報を,たとえ機密扱いの情報であっても,原則3-6,10,27,28に従い,公共の利益を考慮した上で,開示するべきである。」,(d)公正な裁判を保証するために必要な情報の開示を公的機関が拒んだ場合,裁判所は審理を停止,若しくは起訴を棄却すべきである。」と定めている。

 

  これと比較して,本件法律は,刑事裁判における特定秘密の被告人・弁護人への開示や刑事裁判における防御権保障に関する規定を全く欠いており,被告人の裁判を受ける権利や弁護人選任権を,実質的に侵害している。

 

  このように,本件法律の下では,適正手続の最たるものである公正な裁判を受ける権利や公開の裁判を受ける権利の保障がなされなくなるおそれがあり,適正手続保障(憲法31条)に違反する。

 

() 小 括

  以上に述べたとおり,本件法律は,憲法13条,19条,21条,23条及び31条が保障する基本的人権を侵害するものであり,憲法に違反する法律として無効であり,その施行は差し止められなければならない。

 

 本件訴訟が適法であること

 (1) 本件訴訟の内容

   本件訴訟は,本件法律が憲法に違反する内容の法律であって無効であることの確認を求めるとともに,その事前差止めを求める行政訴訟である。

 

(2) 無名抗告訴訟が認められるべきこと

  そもそも,日本国憲法は,国民に対して裁判を受ける権利を保障しており(憲法32条),定抗告訴訟によって一定の救済がなされるからといって,それによっても裁判を受ける権利の保障に欠けるところがあれば,法定外抗告訴訟,すなわち無名抗告訴訟を認めるべき場合があるというべきであり,国民の権利・義務を擁護するという裁判所の使命を考えれば,無名抗告訴訟を認めた上で(学説においてもこれを否定する見解は存しない。),その要件を吟味していくべきである。

 

  行政事件訴訟法3条1項は,行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟を抗告訴訟と呼び,同条2項以下において,「処分の取消しの訴え」,「裁決の取消しの訴え」,「無効等確認の訴え」,「不作為の違法確認の訴え」の4種の訴訟(法定抗告訴訟)を定めており,平成16年(2004年)改正により,「義務付け訴訟」と「差止め訴訟」の2種の訴訟が法定抗告訴訟として追加された。しかしながら,同条が,抗告訴訟の類型を上記の6種類に制限する趣旨ではないと解されている(塩野宏『行政法Ⅱ行政救済法〔第5版補訂版〕』82頁,251頁以下,宇賀克也『行政法概説Ⅱ行政救済法〔第4版〕』119頁等)

 

  したがって,行政事件訴訟法は,抗告訴訟を上記の4種類に限定するものではなく,それ以外のいわゆる無名抗告訴訟であっても,行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟であって,訴訟形式において適法である限り,これを認容する趣旨であり,無名抗告訴訟には,行政事件訴訟砲38条1項が適用されると解すべきである(大阪高裁昭和60年11月29日・行政事件裁判例集36巻11・12合併号1910頁参照)

 

(3) 無効確認訴訟について

  本件訴えのうち,本件法律が無効であることの確認を求める部分は,米国における「宣言判決」declaratory judgmentを求める宣言判決請求訴訟である(喜田村洋一「宣言判決と差止命令」『講座憲法訴訟・第3巻』41頁,塗抹秀典『憲法訴訟』有斐閣法学大系160頁参照。「違憲無効確認訴訟」とも呼ばれる。)

 

  ある法令が存在し,これを行政庁が適用するにあたって,国民は自分がなそうとする行為に対して当該法令が適用されるか否かが不分明な場合がある。例えば,法令自体が違憲無効であり,適用の可能性がそもそも存在しないと考えられる場合がある。

 

  しかしながら,そのままでは不確定な状態であるから,国民は,自分の行為を確信を持って選択することはできない。したがって,国民の側からすれば,このように法的に不安定な状態は早期に解消されることが望ましい。

 

  ところが,このような法的不安定の解消を求められないとしたら,国民としては,ジレンマに陥ってしまう。すなわち,一つの選択としては,自分の解釈が正しいという確信に基づいて行動することが考えられるが,この場合には,自分の解釈が誤っており,これによる不利益を受けるという可能性が常に残る。もう一つの選択としては,このような危険を避けるために,とりあえず法令に従うことが考えられるが,この場合には,法令に絶対に違反しないためには,解釈が分かれる行為は絶対に選択しないとするしかなく,国民は不利益を回避するために,憲法上保障されていると信ずる行為であっても放棄せざるを得なくなるが,これは国民の自由を最大限保障しようとする憲法の理念に反する。

 

  このように,国民が,法令違反による不利益を冒すか,主観的には権利と考えられる行為をあきらめるかのジレンマに陥ってしまうが,米国では,このようなジレンマに対する救済として,「宣言判決」という制度が設けられているのである(前掲・喜田村洋一論文39~41頁参照)

 

 いわゆる長野勤評事件についての最高裁昭和47年11月30日第一小法廷判決(民集26巻9号46頁)は,特に訴訟形態について言及することなく,「具体的・現実的な争訟の解決を目的とする現行訴訟制度のもとにおいては,義務違反の結果として将来なんらかの不利益処分を受けるおそれがあるというだけで,その処分の発動を差し止めるため,事前に右義務の存否の確定を求めることが当然許されるわけではなく,当該義務の履行によつて侵害を受ける権利の性質およびその侵害の程度,違反に対する制裁としての不利益処分の確実性およびその内容または性質等に照らし,右処分を受けてからこれに関する訴訟のなかで事後的に義務の存否を争つたのでは回復しがたい重大な損害を被るおそれがある等,事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情がある場合は格別,そうでないかぎり,あらかじめ右のような義務の存否の確定を求める法律上の利益を認めることはできないものと解すべきである。」と述べて,「事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情がある場合」には,宣言判決請求訴訟が認められると判断していると解することができる(戸松・前掲書162頁参照)

 

  その後,最高裁平成元年7月4日第三小法廷判決(訟務月報36巻1号137頁,判例時報1336号86頁)は,「上告人が,河川法七五条に基づく監督処分その他の不利益処分をまって,これに関する訴訟等において事後的に本件土地が河川法にいう河川区域に属するかどうかを争ったのでは,回復しがたい重大な損害を被るおそれがある等の特段の事情があるということはできないから,上告人は,あらかじめ河川管理者たる被上告人が河川法上の処分をしてはならない義務があることの確認(第一次的訴え)ないし河川法上の処分権限がないことの確認(第二次的訴え)及びこれらと同趣旨の本件土地が河川法にいう河川区域でないことの確認(第三次的訴え)を求める法律上の利益を有するということはできない」と判断しており,上記判断は確立されたものと考えてよい。

 

  このようにして認められた宣言判決請求訴訟も,無名抗告訴訟の一類型として位置付けるべきである。

 

(4) 差止訴訟について

  本件訴えのうち,本件法律の施行の差止めを求める請求(請求の趣旨2項)は,行政事件訴訟法3条7項が定める「差止めの訴え」である。これは,平成16年(2004年)改正により追加された訴訟類型である。

 

  同法第37条の4第1項は,「一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合」に差止めの訴えを提起することを認めている。

 

  これは,前述したいわゆる長野勤評事件についての最高裁昭和47年11月30日第一小法廷判決(民集26巻9号46頁)が,「当該義務の履行によつて侵害を受ける権利の性質およびその侵害の程度,違反に対する制裁としての不利益処分の確実性およびその内容または性質等に照らし,右処分を受けてからこれに関する訴訟のなかで事後的に義務の存否を争つたのでは回復しがたい重大な損害を被るおそれがある等,事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情がある場合」を立法化したものと考えられるから,同判決を参考にすることができる。

 

  なお,ここで,本件法律及びその行為は,形式的には,一般的,抽象的な規範である法律自体及びその定立である立法行為は,通常は,これによって,直接,国民の権利義務を形成し,またはその範囲を確定することが法律上認められる訳ではないので,抗告訴訟の対象となる処分性がないと考えられることが問題となる。

 

  しかしながら,当該立法行為の実質が,専ら原告らの特定個人に向けられたものであって,かつ,その個人に対する法の執行行為にほかならないと考えられる場合には,本件法律及びその立法行為が処分に該当する余地がないとは言えないと解される。

 

  本件法律が施行されると,約41万件もの特定秘密が指定されると言われており,原告らフリージャーナリストが日常的な取材行為を行う中で,本件法律の罰則である特定取得行為罪や,共謀罪・独立教唆罪・煽動罪などが適用されるおそれがあり,日常的な取材行為が,その脅威の下で行われるという意味において,本件法律の施行自体による効果として,直接的かつ現実的に,原告らの権利ないし利益が侵害されているのと同視できると考えられる。

 

  よって,本件法律自体及びその立法行為は,抗告訴訟の対象となる処分性があると言うべきであるから,本件法律の無効確認訴訟は無名抗告訴訟の一種として認められるべきである。

 

 原告らに対する不法行為の成立及びその損害

(1) 原告らに対する不法行為の成立

  前述したとおり,本件法律は,違憲・無効な法律であるが,これが原告らに対して適用されて罰せられたり,日常的に,いつ逮捕されるかもしれないと萎縮させられることになるし,それは,本件法律が施行される前である現在においてだけでなく,本件法律が施行された後も同様であり,原告らは,本件法律が存在する限り,萎縮し続けることになるのである。

 

  したがって,本件法律が成立し,存在しているというだけで,原告らは,平穏に生活する法的利益を侵害するものとして,原告らに対する精神的苦痛を与えるものとして,国会における本件法律の立法行為は。国家賠償法1条1項の「公権力の行使」として,原告らに対する国家賠償責任を発生させると解すべきである。

 

  なお,国会議員は,立法に関しては,原則として,国民全体に対する関係では政治的責任を負うにとどまり,個別の国民に対応した関係での法的義務を負わないが,例外的に,国会議員の立法行為についても,立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず,国会があえて当該立法を行ったような場合には違法となりうると解すべきである(最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁参照)

 

  本件については,前述したとおり,憲法13条,19条,21条,23条及び31条が保障する基本的人権を侵害する内容であり,それは一義的にな明確である場合と同視できるから,国会における本件法律の立法行為は。国家賠償法1条1項の「公権力の行使」として違法であると解すべきである。

 

(2) 原告らの被った損害

  原告らは,本件法律の制定により重大な精神的損害を被ったものであるが,それを慰謝するための慰謝料としては,1人当たり金10万円が相当である。

 

7 結 語

  よって,原告らは,被告に対し,請求の趣旨第1項記載の本件法律の無効であることの確認及び本件法律の施行の差止めを求めるとともに,国家賠償法1条1項に基づき,請求の趣旨第3項のとおり,各金10万円及びこれに対する本件法律が成立した日である平成25年12月6日から支払済みまで民事法定利率年5分の割合による遅延損害金を求める。

 

証明方法

 甲第1号証 書籍『特定秘密保護法を読む 全条文 反対声明・意見書』(北海道新聞社刊)

 その他,必要に応じ口頭弁論にて提出する。

 

附属書類

 1 訴状副本   2通

 2 甲号証写し  各1通

 3 訴訟委任状  43通

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