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« 秘密保護法違憲≪広島≫訴訟 第1回口頭弁論終了 | トップページ | 原告・佐藤裕一の陳述書(秘密保護法違憲≪東京≫訴訟) »

2015年3月 1日 (日)

原告・明石昇二郎の陳述書(秘密保護法違憲≪東京≫訴訟)

 秘密保護法違憲訴訟では、訴状提出と同時に執行停止申立書をあわせて出しています。このとき原告のひとり明石昇二郎(ルポライター)が提出した陳述書を公開します。

陳述書

2014年3月26日

東京地方裁判所民事部 御中

 

                      申立人         

 

    申 立 人   氏  名   明石 昇二郎

住  所   

            職  業   文筆業

            生年月日   

            電  話   

 

 私 申立人 明石昇二郎(以下「申立人明石」という)は、一九八七年よりフリーランスのルポライターとして活動を開始し、現在に至っている。「ルポライター」とは、事故や事件の現場に足を運び、取材した事実をもとに報道をする職業である。

 

 これまでに執筆した書籍の数はおよそ二〇冊ほどであり、新聞、雑誌、テレビなどでも表現活動を行なっている。

 

 その中から、特定秘密の保護に関する法律(以下「特定秘密保護法」という)によって今後、処罰の対象とされかねない申立人明石の自著『「最悪」の核施設 六ヶ所再処理工場』(集英社新書、共著)から一部を抜粋して、以下に紹介する。

 

 二〇一二年六月二〇日、青森県六ヶ所村にある核燃料再処理工場の延命に苦慮する原子力ムラに、突如、政治の舞台から強力な援護射撃が繰り出された。日本の原子力の新たな使い道として「核武装」が登場してきたのである。窮余の策だとしても、あまりにも恥知らずな話だ。

 

 同日に成立した原子力規制委員会設置法の第一条には、

「我が国の安全保障に資する」

 とする文言が盛り込まれている。第一条の全文は次のとおり(ゴチックは明石)。

 

原子力規制委員会設置法案
 
(目的)
 

第一条 この法律は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故を契機に明らかとなった原子力の研究、開発及び利用 (以下「原子力利用」という。)に関する政策に係る縦割り行政の弊害を除去し、並びに一の行政組織が原子力利用の推進及び規制の両方の機能を担うことにより生ずる問題を解消するため、原子力利用における事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立って、確立された国際的な基準を踏まえて原子力利用における安全の確保を図るため必要な施策を策定し、又は実施する事務(原子力に係る製錬、加工、貯蔵、再処理及び廃棄の事業並びに原子炉に関する規制に関することを含む。)を一元的につかさどるとともに、その委員長及び委員が専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使する原子力規制委員会を設置し、もって国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的とする。

 

 そしてこの法律の「附則」の中で、「原子力の憲法」とも言われる原子力基本法の基本方針変更まで行なわれた。その「附則」にはこうある(ゴチックは明石)。

 

(原子力基本法の一部改正)
 
同法附則第十二条 原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)の一部を次のように改正する。
 
(中略)
 
第二条中「原子力の研究、開発及び利用」を「原子力利用」に改め、同条に次の一項を加える。

2 前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。

 

 ここで言われる「安全保障」とは何か。広辞苑第四版(岩波書店)はこう解説する(カッコ内は明石)。

 

「外部からの侵略に対して国家および国民の安全を保障する(守る)こと」

 つまり、原子力を「安全保障に資する」(=役立てる)こととは、外部からの侵略に対する抑止力として原子力を役立てること以外の何ものでもない。日本の政治家たちは、すでに「核武装」したと宣言している北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の後に続こうとしているらしい。

 

 実質上の自爆とも言える〝三発目の原爆〟を福島の地に受けてもまだ懲りない人々がいることには、驚きを禁じえない。せめて正々堂々と議論を戦わした結果であればともかく、この原子力基本法改正は、「日本に真の原子力規制当局を設置する」という美名の下、事前に国民に告知されることなく、だまし討ちの形で行なわれた。

 

 したがって、同法改正案を事前に報じるマスコミも一切なかった。かくいう明石も、国会で同法改正案が成立した後に知った次第である。普通の民主主義国家ではありえない、姑息かつドサクサ紛れの法改正である。

 

 この法改正により、明日にも日本が核武装をするわけではない。最大の問題点は、これまで「平和利用」に限られていた日本の原子力が、今回の法改正によってそれ以外の抜け道を得た――ということだ。

 

 このことによる波及効果は計り知れないほど大きい。「我が国の安全保障に資する」ことが原子力ムラの大義名分となれば、コストの問題は不問に付され、再処理工場も原発も事実上、永遠の存続を保証される。軍事においては「経済性」も「環境汚染対策」も二の次にされるからだ。

 

「まさか被爆国の日本が核武装なんてするわけがない」

 と、高を括っている人も多いことだろう。そんな方たちのために、その楽観を打ち砕くエピソードを紹介する。

 

 一九九四年、高速増殖炉「もんじゅ」のブランケット燃料(注1)を茨城県東海村の核施設「RETF」(リサイクル機器試験施設)で処理することで、九八%という高純度のプルトニウム二三九が得られることが判明し、核武装疑惑が浮上した。高速増殖炉の燃料として使うにしても、これほど高純度のプルトニウムは必要ないからだ。

 

 その際、「もんじゅ」の監督官庁である科学技術庁(当時)は明石の取材(注2)に対し、こう答えていた(ゴチックは明石)。

 

「我が国の原子力の研究・開発および利用は原子力基本法に基づき、平和利用に限り行なわれており、核燃料物質等についてはNPT条約(核拡散防止条約)の下でIAEA(国際原子力機関)および国の査察をはじめとする保障措置の厳密な適用を受けることとなっている。したがって、RETFにおいて試験に使用するブランケット燃料中のプルトニウムが核兵器に転用されることはありえない。また、六ヶ所ウラン濃縮工場(注3)は、ブランケット用劣化ウランの蓄積を目的として建設された施設ではない」

 

 その肝心の「歯止め」だった原子力基本法が、福島第一原発事故のドサクサに紛れて改変され、日本の核兵器開発を阻む法的根拠は何もなくなってしまった。それどころか、原子力を「我が国の安全保障」に役立てよ――というのである。

 

 一九九四年の「核武装疑惑」の際、もんじゅと東海村再処理工場を運営していた動燃(動力炉・核燃料開発事業団。現・日本原子力研究開発機構)の広報担当者は、こう話していた。

 

「もともと原子力技術というのは、早い話、核兵器開発からの派生の技術なんですから、それを逆に戻すこともできるわけです。〝親戚〟みたいなものなんですから。それに歯止めをかけるのは、技術的な問題ではなくて政治的な問題になります」

 

 さらにダメ押しとして、福島第一原発の耐震バックチェック審査が行なわれていた当時の原子力安全委員会委員長である鈴木篤之氏(現・日本原子力研究開発機構理事長)のこんな言葉はいかがだろう。

 

「再処理技術の平和目的から軍事目的への転用の可能性を、将来にわたって皆無と断定するのは難しいようです。そこには、政体の変化とそれに伴う国としての意思決定の変化があり得るからです」(注4)

 

 そして今、彼らの危惧は現実の話となった。

 果たして日本は、世界初の「電気料金を使って核武装する国」となるのだろうか。

 

1 「もんじゅ」の燃料には二種類あり、原子炉を動かすための「炉心燃料」と、炉心の回りに置かれた「ブランケット燃料」がある。ブランケット燃料の中には劣化ウラン(ウラン二三八)が詰められている。つまりブランケット燃料とは、原子炉から飛び出してくる中性子を使い、劣化ウランをプルトニウム二三九に変えるための「プルトニウム製造マシーン」だ。一九七七年に運転を開始した日本の高速増殖炉「常陽」にもブランケット燃料が取りつけられていたが、核の不拡散を方針に掲げた米国カーター政権によって取り外させられている。

注2 『フライデー』一九九四年九月二三日号および『技術と人間』一九九四年一〇月号で詳報した。

注3 天然ウランを遠心分離機で濃縮し、原発燃料用の濃縮ウランを製造する工場。六ヶ所村再処理工場に隣接し、一九九二年に操業開始。この当時、濃縮ウランの価格が下落しており、にもかかわらず日本がウラン濃縮工場の建設・操業を強行したことで、疑惑に拍車をかけていた。

注4 鈴木篤之著『原子力の燃料サイクル』より。

 

 

 

 申立人明石の自著からの引用は以上である。

 

 こうした日本の核武装、言い換えれば「我が国の安全保障に関わる情報は、特定秘密保護法の定めによって、ほぼ間違いなく「特定秘密」に指定され、引用した自著の中で触れてきたような事実や、その確認作業としての取材活動にしても、今後は特定秘密保護法によって処罰の対象となる危険がある。

 

 また、特定秘密保護法3条には、これまで「公になっていないもの」が特定秘密として指定されるとの規定があるものの、過去の言論や出版物は絶対に特定秘密に指定されないという保証は何ひとつない。政府のさじ加減ひとつで、執筆者の与り知らないところで自著の内容が特定秘密に指定され、それによって逮捕されたとしても、逮捕理由が「秘密」にされる限り、過去の言論や出版物が規制の対象になったことなど、執筆者本人にも弁護士にも分からない。

 

 つまり、二一世紀の現代に、時代錯誤も甚だしい「禁書」や「焚書」が出現する可能性さえある。

 

 従って、特定秘密保護法が施行されると、フリーランス・ルポライターとしての活動、すなわち日本国憲法二一条の定める「表現の自由」が甚だしく制限を受ける危険がある。申立人明石が当裁判の原告に加わった最大の理由は、この点である。

 

 加えて、平成25年12月27日に内閣官房特定秘密保護法施行準備室が発行した「特定秘密の保護に関する法律Q&A」には、次のように書かれている。

「報道機関の通常の取材行為は、正当業務行為に該当する旨を規定し、(特定秘密保護法の)処罰対象とならない」

 

 ただし、ここで言われる「報道機関」や「通常の取材行為」とは、誰が決めるものなのか、特定秘密保護法には何の定めもない。たとえ「通常の取材行為」であったとしても、それが「報道機関」によるものでなければ特定秘密保護法の処罰の対象とされるかもしれない。つまり、この規定によってジャーナリズムやジャーナリストが処罰されないという保証はない。

 

 申立人明石はかつて、官庁詰めの記者クラブから「報道機関でないこと」を理由に、記者会見から排除された経験がある。

 

 一九九五年の「薬害エイズ」事件に際してのことだが、厚生省の薬務局長に取材を申し込んだところ、「薬務局長は単独では取材に応じられないが、もしHIV訴訟で東京・大阪の両地裁から和解勧告が出たら、必ず記者会見をやる」との回答を得ていた。その後、裁判所から和解勧告が出され、当時連載記事を執筆していた『週刊プレイボーイ』(集英社)記者の肩書きで、薬務局長の記者会見に出席しようとしたところ、厚生省記者クラブ(正式名称・厚生記者会)に取材を妨害された。

 

 その際、厚生記者会の幹事社だった時事通信の記者が説明した「会見出席不許可」の理由は、次のようなものだった。

 

「クラブに諮ったんですけど、大変申し訳ないんですが、お断りしたい。お宅(週刊プレイボーイ誌)はジャーナリズムではないので」

 

 言うまでもなく、通信社や記者クラブに「その媒体や記者がジャーナリズムか否か」の判断をする資格や権限があるわけではない。

 

 この特定秘密保護法に潜む危険に対する理解を深めていただくために、敢えて例えれば、申立人明石が取材を通じて「特定秘密」に絡んだ贈収賄事件の証拠を掴み、それを報じようとしたところ、それを阻もうとする国家公務員に殺害されたとする。

 

 しかし、その殺人事件自体を丸ごと「特定秘密」に指定してしまえば、証拠は隠滅され、その犯罪行為に対する捜査結果を公表することも「違法行為」とされ、5年から30年間は「秘密」とされる。しかも、30年が過ぎても「秘密指定」が更新されれば、事実上、事件そのものが完全に闇に葬り去られる――。

 

 ちなみに、贈収賄や殺人といった国家公務員による犯罪行為を「秘密指定」してはならないという規定は、特定秘密保護法の中にない。

 

 貴裁判所におかれては、司法に真っ向から挑戦するかのようなこの「特定秘密保護法」に対し、日本国憲法に定めのある「違憲立法審査権」を発動し、特定秘密保護法を無効とする判断を粛々と示していただきたく、提訴する次第である。

 

 

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